Ergoブロックチェーンで使われている「NIPoPoW」が海外でザワついているのでまとめてみることにしました。 マニア向けですが、チャールズもお気に入りでCardanoにも関わるプロジェクトなので、参考にしてみてく
概要
Ergoのコア技術「NIPoPoW」をまとめるとこんな感じです。 ・ブロックチェーンのデータ → データを大幅に圧縮し安全に検証できる ・ウォレットの同期速度 → 一瞬で同期できる ・セキュリティ → フルノードと同等レベルをスマホのウォレットで実現 ・マイニング → スマホでマイニングできる ・相互運用性 → CardanoなどのPoSとPoWの連携がスムーズになる 要するに「スマホで軽量/安全にDappsを使ったりマイニングできるから、実社会で使えるぜ!」というものなんです! これだとあまりインパクトがないですが、社会実装においてかなり重要な技術となっています。
NIPoPoWとは
日本語では、非対話型プルーフオブワーク(Non-Interactive Proofs of Proof-of-Work)といい「ブロックチェーンネットワークに接続せず、ダウンロードせずに、プルーフオブワークベースのブロックチェーンでイベントが発生したことを確認できる短いスタンドアロン文字列😃」です。。 要するに「直接ブロックチェーンを見なくても、今までの取引が正しいと確認できる」技術です。 では、それを「どうやってやるのか?」と疑問に思ったかもしれません。 カギとなる『スーパーブロック』を使って説明していきます。
スーパーブロック
一般的なブロックチェーンで、あなたがフルノードのウォレットを使い始めようとしたら、1番初めのブロック(ジェネシスブロック)から最新のブロックまでの取引を全て検証する必要があります。 これは、とんでもなく膨大な作業が必要で、イーサリアムでは数テラバイトのデータを数ヶ月かけて行う必要があります。 一方で、NIPoPoWを使用すると、わずか数キロバイトのデータで検証が済んでしまいます。(ほぼリアルタイム!) 仕組みとしてはNIPoPoWでは、ブロックを生成(図:白ブロック)しながら、一定の間隔で「スーパーブロック」(図:黄ブロック)というスマートコントラクトを利用したデータを生成します。 では、スーパーブロックの中には、何が入るでしょうか? ここには次のスーパーブロックが生成されるまでに、生まれてきたブロック(図:白ブロック)の重要な情報のみがまとめられていきます。(ヘッダー情報と言います) あなたがウォレットを使う場合に、スーパーブロックがまとめた情報のみを使って取引の正しさを検証できるため全ブロックを検証する必要がなくなります。 冒頭で述べた「直接ブロックチェーンを見なくても、今までの取引が正しいと確認できる」技術とはこういうことだったんです!
この技術は、非常に驚異的でなんと100キロバイト程で全ブロックの検証を行うことができ、スマートフォンでもフルノードと同等のセキュリティでDappsが利用できるようになります。 Cardanoのダイダロスなどのフルノードウォレットは、全ブロックを検証する時間がめちゃくちゃかかりますし、ストレージも膨大になります。 全検証で安全に使えるのがメリットですが、それと同等のセキュリティをスマホで、ほぼリアルタイムで使えるのです! *ちなみにYOROIなどのライトウォレットは、以下の点で安全性は劣ってしまいます。(必ずしも危険という訳ではないです) 1.特定のノードにブロック情報をもらってデータ同期する 2.自分の関わる取引のみ検証する
Ergo その他特徴
ここからは、ザッとErgoのその他の特徴について紹介します。
対数空間マイニング
Ergoでは、スマホでのマイニングを可能にします。 検証者が全てのブロックチェーン情報を保存する必要がなく、さらに 対数空間マイニングという方式を使うことで、検証に必要なデータを 対数関数的(指数関数の逆)に減らします。イメージとして右図のように時間が経っていくにつれて検証に必要なデータ量が落ち着いていきます。 これにより、モバイルで誰でもマイニングに参加できるので、分散化にも貢献します。 *この対数空間マイニングは、「ベルベットフォーク」というハードフォークなしで安全に実装できるのですが、これ以上は技術的に沼なので割愛します。 (知りたい方はリンク先の論文へ!)
サイドチェーン
NIPoPoWは、今までサイドチェーンで解決できなかった問題を解く可能性があります。 例えば、ビットコインに新たな機能を追加しようとサイドチェーンを作成するとします。サイドチェーンはメインチェーンの取引データの正しさを証明する必要がありますが、従来の研究では難しいとされていました。 ユーザーは実際に資金があることを証明するものを添付する手間が必要であり、脆弱性となっていました。 NIPoPoWは取引の正しさを証明できると期待されており、「サイドチェーンを完全に安全にする最初のプロトコル」と称されています。 この技術によって、直接メインチェーンに触ることなく新機能を追加したり、一部の処理をサイドチェーンに任せ メインチェーンの負荷を軽減させるなどのスループットの改善が期待できます。
CardanoとErgoの連携
最後にCardanoと連携についてまとめたいと思います。 NIPoPoWは、CardanoをはじめとするPOSとクロスチェーン通信ができます。 また、CardanoはNIPoPoWを通じてErgoと非対話的な検証と、別チェーンとの統合ができます。 例えば NIPoPoWなしでビットコインとイーサリアムを統合しようとする場合 イーサリアム上で、「ラップドビットコイン(wBTC)」を発行して取引を行う必要があります。 またイーサリアムとビットコインのチェーンをコインが行き来する際に、対話的(送ったよ!受け取ったよ!)な検証が必要です。 一方、NIPoPoWでビットコインとCardanoを統合した場合 「ラップドトークン」が不必要になり、対話なしでよりスムーズなクロスチェーン移動が可能になります。 要するに、ユーザーの使いやすさが圧倒的に改善されるということですね!
おわりに
ここまで、読んでいただき誠にありがとうございます。ErgoのNIPoPoWの技術は海外で日に日に盛り上がりを見せています。 実際にCardanoとビットコインをはじめとするPOWとの相互運用を実現し、ウォレット同期を一瞬で完了させ、スマホマイニングをもたらすというインフラとして超絶価値の高いプロジェクトと筆者は感じています。 この技術に魅力を感じていただけた方は、ぜひ技術資料を読み漁ってみてくださいね!! ありがとうございました。
参考文献
Medium
Why Ergo is a Dark Horse in the Crypto Space
For those of you unfamiliar with Ergo, it’s probably time to get familiar.
IOHK
The Velvet Path to Superlight Blockchain Clients – IOHK 研究
The Velvet Path to Superlight Blockchain Clients, , September/2021
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